Thursday, May 6, 2010

米国株式市場の大混乱はHigh Frequency Tradingのなせる業

ゴールドマン・サックスで有名になったHigh Frequency Trading、覚えてます?

5月6日の米国株式市場は大変にスリリングな相場でした。ニューヨーク時間の2時42,3分ごろから、ダウ工業平均、ナスダック、S&P500等の主要指数が突然急降下を始めたのです。私はちょうど英語のブログを書きながら横目で株式チャートを見ていたのですが、それまではマイナス200ポイント程度だったダウ工業平均が数秒後に顔を上げたときにはマイナス400、あっという間に何の歯止めも掛からずに600、700、800と落ちていき、マイナス998.50を記録したのは2時46分。そこからまた急激に戻して結局はマイナス347で終わりました。

最初は、欧州の銀行が貸し出しを全面停止したらしい、という噂のせいだ、というニュースが流れました。そのあとしばらくして、どこかのトレーダーがオーダーの桁数を間違えた、という噂が流れ、そうしているうちにシティグループのトレーダーらしい、という噂になりました。

S&P500の先物契約の一種のS&P500 E-Mini Futuresを16Million(1600万)売るオーダーを出すつもりが16Billion(160億)のオーダーになってしまった、ということらしいですが、シティグループのE-Mini Futuresの今日の取引高は60億に過ぎないことが分かり、この160億のオーダーがどこから出たのか、今のところ不明です。シカゴ商品先物取引所(CME)を通じて出たオーダーらしい、ということだけは分かっていますが。

きっかけになったのはこの先物のオーダーかもしれませんが、市場を最大9パーセントも下げたのはどうも、去年一時話題になったもののマスメディアからすぐに消えてしまった、High Frequency Tradingが原因のようです。Quant Trading、Algo Tradingなどとも言われますが、要するに高速のコンピュータを証券取引所のサーバーのすぐ隣に設置し(設置料金は結構なものだと聞きます)、高度なアルゴリズムを使ったプログラムで一秒間に100、1000とも言われるトレードを出し、自社に有利なBid、Ask値を引き出すと共に市場にLiquidity、流動性を与える、というものです。

今日株式市場で起こったのは、Liquidityを付加するどころかそのまったく逆、Liquidityを吸い取る結果になりました。

どこから来たオーダーにせよ、S&P先物から更に派生したデリバティブを使って先物市場を急激に下げ、その結果通常の市場が下がらざるを得なくなる、それをかぎつけたアルゴリズムが我先に押し寄せて更に市場を下げる。ジャンボジェットで飛行中に乗客がいっせいに立ち上がって飛行機の最後部に押し寄せたらどうなるか(やらないでくださいよ)。

ゼロヘッジに詳しい記事が出ていますので、お読みください。ゼロヘッジのタイラー・ダーデンは、「(High Frequency Tradingで)株式市場がほとんど死にかけた日」と言っています。何の歯止めも無く、ただひたすら落ちていく様子は、2008年の9月、10月の市場下落の時にもそうそう見かけなかったと思います。ダウがマイナス1000を越える直前に、誰がどうやって止めたのか。

また、もうひとつ分からないのは、プログラムトレーディング(総取引高の7割以上を占めるといわれています)が今日のように機能不全に陥ったときに作動するはずのサブルーチンがまったく作動した形跡がないこと。まあ、最後には誰かがどうかして止めたのですが、下げている最中はとても止まるとは思えませんでした。

個人的には、まったくの妄想、パラノイアと言われるのを覚悟で、これは一種のCyber Terrorismだったのではないか、とも思っています。Algo Botsの誤動作防止のサブルーチンをオーバーライドしておいて、E-Mini Futuresに大量の売り注文を出す。先物と通常市場のArbitrageを出さないためには通常の市場を下げなくてはならない。いったん下げが始まると、High Frequency Tradingのアルゴリズムが一斉に作動して、一斉に同じ方向に向かって走り出す。サブルーチンがオーバーライドされているので、アルゴリズムは止まらない。まあ、私も正確に把握しているわけではありませんが、だいたいそんなところかなあと思っています。

前述のゼロヘッジの記事の最後の方に、市場が急激に下げている真っ最中にLimit Orderで買い注文を何度か出してみたファンド・マネージャーの意見が載っています。出すたびに、彼の注文より1セントだけ高い注文がほぼ同時に出、彼の注文はいっさい通らなかった、とのこと。この1セント高い注文はHigh Frequency Tradingで、実際のトレードが成立したのかどうか、多分しなかったのでしょう。そのようにして、Liquidityがほとんどゼロのまま、市場の指数はひたすら落ちていったのです。

しかも悪いことに、一般の投資家が利用するオンラインのブローカーはどこも、市場が下落している間中システムがダウンまたはスローダウンし、私も自分のアカウントにアクセスできませんでした。ダウがマイナス1000の直前で止まって引き返したのを見て買いを入れたかったのですが、まったくだめ。

さて明日はどうなることやら。

0 comments:

Post a Comment