Monday, April 25, 2011

放射能暫定値の決め方:野菜はなぜ2000ベクレル?

どこをどうやってたどり着いたのかまったく覚えていませんが、食品を購入する際に放射能濃度を考えざるを得なくなってしまった日本の皆様の理解の一助になるのでは、と思われる記事にぶち当たりましたので、リンクしておきます。

日本科学未来館、という、東京の豊洲にある科学博物館のサイトで、4月19日付けで出ていた記事です。これによると、放射性セシウム起源の年間放射線量を5ミリシーベルト以下、放射性ヨウ素起源の年間放射線量を2ミリシーベルト以下に抑えるように、放射能濃度規制値を決めた、ということです。

福島原発事故以前、食品に含まれる放射性物質による自然内部被曝は世界平均で自然被曝放射線量の約15パーセントです。(放射線科学センター資料参考。)日本でも同じ割合だとすると、1.4ミリシーベルトの年間自然被曝量の15%、0.21シーベルトが食品から自然に摂取される放射線量ということになります。

福島原発事故という緊急時にあたって、この食品由来の内部被曝部分をセシウム、ヨウ素足して7ミリシーベルト以下に抑えよう、と理解しますがそうなんでしょうか?

この7ミリシーベルトがやはり全体の被曝線量の15パーセントだとすると、全体の年間被曝量は47ミリシーベルトになります。そういえば、年間の被曝許容量を緊急時なので大幅に引き上げようという話が続いていますね。IAEAのお勧めは確か50~100ミリシーベルト。計算上は合いますね。

となると、暫定値をそのように設定した、ということで、年間被曝許容量を実は既に上げているのだ、ということが言えるのでしょうか?(未来館の人にメールで聞いてみます。)

(以下、記事全掲。強調は私が加えました。)


【放射性物質】「暫定規制値」の決め方~野菜はなぜ2000ベクレル?~

福島第一原子力発電所の事故後、放射性物質が飛散し、実際に野菜や水道水から放射性ヨウ素や放射性セシウムが検出される事態となりました。放射性物 質は、普段から身の回りに存在していて珍しいものではありませんが、通常よりも量が多くなると健康への影響が心配されます。影響が生じない食品放射能レベ ルについては、ICRP(国際防護委員会)から1992年に食品に関する指針が示されていましたが、日本国内の基準として定まったものは2011年3月時 点では存在していませんでした

そこで震災後に、内閣府から食品ごとの暫定(ざんてい)規制値が発表されました。この暫定規制値では、放 射性ヨウ素がもつ放射能について、飲料水1kgあたり300 Bq(ベクレル)、野菜類では1 kgあたり2000 Bqまでという具合に、食品の種類に応じて重量当たりの放射能の上限が与えられています(下記リンク参照)。ではこの暫定規制値は、どのように決められた のでしょうか。
厚生労働省「魚介類中の放射性ヨウ素に関する暫定基準値の取扱いについて」

放射性セシウムの暫定規制値
現 在、原子力発電所からいろいろな放射性物質が出ていますが、特に放射性ヨウ素、放射性セシウムが問題となっています。放射性物質は種類ごとに身体への影響 が違うため、摂取上限値は各々の物質ごとに決められます。放射性セシウムは、体に取り込まれると全身に分布します。食品安全委員会はICRPの指針にもと づき、放射性セシウム起源の放射線量(実効線量)を、1年間で5 mSv(ミリシーベルト)以下としました。

暫定規制値は、この放射能濃 度の上限値を、さらに日本人の平均的な食事パターンに当てはめて、食品ごとにそれぞれの上限値を算出したものです。放射性セシウムでは、「飲料水」「牛 乳・乳製品」「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」の5つのグループに分けて考えます。1年間に受ける放射線量の上限を食品グループごとに1 mSvずつとし、1年間での食品摂取による被ばく量がこの値を超えないように各グループでの放射能濃度の上限を決定しています。

さらに、 年齢グループごとの各食品グループの摂取量の違い(表の「年間摂取量」参照)や、身体への影響(式の「実効線量係数」参照)を加味する必要があります。こ れらの条件を考慮し、下の式で、それぞれの年齢グループについて放射能濃度を算出。そのうち最も低い濃度をさらに下回る値を暫定規制値としています。つま り乳児から大人まで、十分安全を確保した値となっているのです。

放射性ヨウ素の暫定規制値
一 方、ヨウ素は身体の中でも特に甲状腺に取り込まれるという性質をもつため、放射性ヨウ素起源の放射線量(実効線量)の上限は、1年間で2 mSvと定められていますこれを人が摂取する「飲料水」「牛乳・乳製品」「野菜類」の3グループに対し、2 mSvの9分の2ずつ、各々およそ0.4 mSvとして算出しています。放射性ヨウ素は半減期が8日と短いため、「穀類」「肉・卵・魚・その他」の食品カテゴリーに属するものを消費者が口にする時 点では放射性ヨウ素はほとんど含まれないものとして、これらからの放射性ヨウ素の取り込みは考慮されていないのです。

さて、2011年4 月4日、ほぼ存在しないとして暫定規制値を定めていなかった「魚類」(コウナゴ)から、放射性ヨウ素が相当量検出されました。そこで、新たに魚介類の暫定 規制値が加えられました(下表)。野菜を摂取した場合を転用して差し支えないと考えられ、魚介類の暫定規制値は野菜類と同じ2000 Bq/kgです

以上、暫定規制値の決め方をみてきましたが、国の安全衛生委員会では、今回の発表は緊急の対応であり、今後継続して食品健康影響評価を行なう必要があるとしています。長期的な遺伝毒性やがんへの影響も視野に入れて検討していく必要があります。

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(科学コミュニケーター 竹下陽子)
協力:日本放射線影響学会

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